レースクイーンとは?廃止論や改称の真相と知られざる給料・裏側
轟音と熱気が渦巻くサーキットにおいて、華やかなコスチュームでチームやスポンサーを彩る「レースクイーン」。モータースポーツファンのみならず、一般のエンタメシーンでも広く認知されてきた存在ですが、近年はそのあり方が世界規模で大きな転換期を迎えています。
海外におけるグリッドガール廃止の波やジェンダー平等をめぐる議論を受け、国内最高峰の自動車レース「SUPER GT」でも2024年から呼称が「レースアンバサダー(Race Ambassador)」へと正式に変更されました。単なる「サーキットの華」から「チームとモータースポーツの魅力を伝える広報・発信の主役」へと進化を遂げる彼女たち(そして彼ら)の役割、知られざる給料事情やオーディションの実態、そして歴代の有名タレントまで、その全貌を余すところなく解き明かします。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:レースクイーンは2024年以降SUPER GTを中心に「レースアンバサダー」へと改称され、単なるマスコットから発信力を持つ広報担当へと進化している。
- 要点2:「傘持ち」は単なる見栄えではなく、極限状態のドライバーと精密機器を直射日光や雨から守る重要な実務役割を担っている。
- 要点3:日給相場は1.5万〜3万円前後が中心で、SNS発信や配信活動と掛け合わせて高収入を得るプロフェッショナル化が加速している。
【基礎知識】レースクイーンとは?誕生の歴史と知られざる「本当の役割」

レースクイーンとは、モータースポーツの現場でレーシングチームやスポンサー企業のPRを担当するキャンペーンモデルの総称です。日本におけるルーツは1960年代後半、モデルの小川ローザさんらがサーキットで表彰式のプレゼンターやプロモーションガールを務めたことが発祥とされています。1980年代後半から1990年代のバブル期・F1ブームに乗って一大ブームを巻き起こし、独自のカルチャーとして定着しました。
サーキットにおける彼女たちの仕事内容は、単に笑顔でポーズを取ることにとどまりません。主な業務は多岐にわたります。
- グリッドでのドライバー・マシンサポート:スタート直前のスターティンググリッドでチームの看板を掲げ、直射日光や降雨を防ぐパラソルを差出します。
- ピットウォーク・ファンサービス:観客に公開されるピットロードでスポンサーロゴをアピールし、ファンとの記念撮影やノベルティ配布に対応します。
- スポンサーPR・ステージイベント:サーキット内のイベントステージでチームや協賛企業の製品・サービスを紹介するスピーチを行います。
- 表彰式アテンド・公式進行補助:レース終了後のポディウム(表彰台)でトロフィー授与の補助やシャンパンファイトのアシストを担当します。
なかでも象徴的な「傘持ち」の役割には、プロスポーツの現場ならではの実利的な理由が存在します。真夏のサーキットではアスファルトの路面温度が50度以上、レーシングカーの車内温度は60度近くに達します。耐火レーシングスーツを着込んだドライバーはレース前に体温が上昇しすぎると熱中症や集中力低下を引き起こすため、パラソルで直射日光を遮り体温上昇を極力防ぐことが極めて重要なのです。また、直射日光による精密電子機器やタイヤの異常加熱を防ぐなど、勝敗を左右するサポート役としての実務を担っています。
なぜ「レースアンバサダー」へ名称変更?F1グリッドガール廃止から続く大転換

華やかな文化として親しまれてきた一方で、2010年代後半から世界的なジェンダー平等の潮流や女性の性的な対象化に対する批判が集まるようになりました。転換点となったのは2018年、世界最高峰のF1(フォーミュラ1)が「グリッドガール」の廃止を電撃発表したことです。F1の商業権を持つリバティメディアは「現代の社会規範にそぐわない」との声明を出し、女性モデルがスタートグリッドに並ぶ演出を取りやめました。
この決定は世界中で大きな議論を呼び、日本国内のモータースポーツ界にも大きな影響を与えました。しかし、日本のレースクイーンは単なる「雇われの飾り」ではなく、自らオーディションを受け、チームの一員として誇りを持って活動する文化が根付いていました。「女性の貴重な表現の場やキャリアステップを奪うべきではない」という現場の声も強く、日本独自の進化模索が続けられました。
その結実として、国内最高峰の自動車レースであるSUPER GTを統括するGTアソシエイション(GTA)は、2024年シーズンから「レースクイーン」の呼称を廃止し、「レースアンバサダー」へと改称しました。
レースクイーンとレースアンバサダーの決定的な違いは、「立ち位置」と「機能」にあります。外見重視の受動的なアピールから、チームの理念やモータースポーツの面白さをファンへ能動的に伝える「広報・アンバサダー」としての役割が明確化されました。コスチューム規定も見直され、過度な露出を抑えたスポーティで洗練されたデザインが主流となったほか、男性アンバサダーの起用などジェンダーにとらわれない新しいサーキット像が確立されつつあります。
【実態調査】レースクイーンの給料・年収相場と過酷な経済事情

華やかに見える世界ですが、その経済的現実は決して甘いものではありません。レースクイーンの給与体系は基本的に「日給制」が一般的です。
| キャリアランク | 日給相場(1日あたり) | 推定レース年間収入(年8戦=16日) |
|---|---|---|
| 新人・若手 | 10,000円 〜 15,000円 | 約16万円 〜 24万円 |
| 中堅・人気メンバー | 20,000円 〜 35,000円 | 約32万円 〜 56万円 |
| トップクラス・大賞受賞者 | 50,000円 〜 100,000円以上 | 約80万円 〜 160万円以上 |
SUPER GTを例に挙げると、年間レース数は全8戦(予選・決勝で計16日間)です。つまり、サーキットへの出演ギャラ単体での年収は、新人であれば数十万円、トップ層でも100万〜200万円程度に留まります。
では、彼女たちはどのように生計を立てているのでしょうか。多くのレースクイーン・レースアンバサダーは、サーキット以外の多彩な活動で収入源を構築しています。
- 有料ファン撮影会:週末や平日に開催される撮影会への出演。指名やコマ数に応じて1回あたり数万円の報酬が発生します。
- ライブ配信・投げ銭:SHOWROOMやTikTok、17LIVEなどでの定期配信によるギフティング収益。
- インフルエンサーPR:SNSフォロワー数を活かした企業案件や商品プロモーション。
- イベントコンパニオン・モデル業:東京オートサロンや展示会、広告モデルとしての稼働。
トップ層になると撮影会や配信、個人物販、タレント活動を組み合わせて年収500万〜1000万円以上を稼ぎ出すプロフェッショナルも存在しますが、活動初期は美容代や体型維持費、遠征準備などの出費が重なり、アルバイトを掛け持ちしながら夢を追うケースも少なくありません。
芸能界への登竜門|歴代の有名出身タレントと「日本レースクイーン大賞」の価値
レースクイーンは古くから、モデル・女優・バラエティタレントとして羽ばたくための「芸能界への登竜門」として機能してきました。サーキットで培われる度胸、ファン対応力、カメラの前での表現力は、エンタメ界で即戦力となるスキルです。
歴代の出身芸能人には、第一線で活躍するスターが数多く名を連ねています。
- 菜々緒:2010年に「レースクイーン・オブ・ザ・イヤー」を受賞。卓越したプロポーションと存在感で注目を集め、トップモデルから本格派女優へと大ブレイクを果たしました。
- 吉岡美穂:2000年代初頭にサーキットの絶対的エースとして脚光を浴び、癒やし系タレントの代表格としてドラマやCMを席巻しました。
- 飯島直子:1990年代初頭のレースクイーン黄金期に活躍。「元祖・癒やし系女王」として社会現象を巻き起こしました。
- 森下千里:レースクイーン活動から人気グラビアアイドル・タレントへ転身し、現在は政治分野でも活動しています。
- おのののか:東京ドームのビール売り子とともにレースクイーンとしても活動し、親しみやすいキャラクターでバラエティ番組の人気者となりました。
そして、彼女たちのステータスを決定づける最大の舞台が、ファン投票によって年間No.1を決める「日本レースクイーン大賞(現・レースアンバサダーアワード)」です。毎年1月に幕張メッセで開催される「東京オートサロン」のメインステージで発表されるこの賞は、グランプリを獲得することで雑誌の表紙やテレビ出演、広告契約への道が一気に開けるため、ファンとチームが一丸となって投票戦を展開する熱狂的なイベントとして知られています。
レースクイーンになるには?事務所オーディションの条件と合格への必須スキル
レースアンバサダーとしてサーキットに立つためには、厳しい倍率のオーディションを突破しなければなりません。個人で直接チームに応募するケースは極めて稀で、モデル事務所やタレント事務所に所属した上でチーム選考にエントリーするルートが王道です。
選考時に求められる主な条件や資質は以下の通りです。
- スタイルと自己管理能力:身長は160cm〜175cm前後が一般的ですが、単に身長の高さだけでなく、チームのコスチュームを美しく着こなせるプロポーションと肌・髪の徹底したケアが求められます。
- SNS発信力・エンゲージメント:X(旧Twitter)、Instagram、TikTokでのフォロワー数や発信の継続性は、現在の選考において極めて重視される項目です。
- モータースポーツへの理解と熱意:チームの戦績やマシンの特徴、スポンサー企業についての基礎知識を理解し、的確にアピールできる知性が問われます。
- 過酷な環境に耐えうる体力と笑顔:真夏の炎天下や真冬の寒風、長時間の立ち仕事でも常に笑顔を絶やさないタフネスが不可欠です。
オーディションの流れは、毎年10月〜12月頃に各事務所内での書類選考がスタートし、12月〜翌年2月にかけて各レーシングチームやスポンサー企業による面接・カメラテストが実施されます。合格者は3月の公式テストや4月の開幕戦に向けて衣装合わせやウォーキング研修を行い、サーキットへとデビューします。
【2026年最新動向】サーキットの現場で進むハイブリッドな活躍と未来像
レースアンバサダーへと進化を遂げたサーキットの現場では、従来のアナログなファンサービスから「デジタルハイブリッド型の広報活動」へと活躍のフィールドが大きく拡張しています。
現在では、ピット裏からのリアルタイムライブ配信、YouTubeでのVlog公開、TikTokを活用したショート動画でのチーム紹介など、アンバサダー自身がコンテンツクリエイターとして機能することが当たり前となりました。サーキットに足を運べない世界中のモータースポーツファンに対しても、チームの熱気やマシンの魅力を届ける重要な架け橋となっています。
さらに、サステナビリティや環境配慮が求められるモータースポーツ界の変革に合わせ、リサイクル素材を採用した機能性ユニフォームの導入や、レースを通じた地域振興活動への参加など、担うミッションの社会的価値も高まっています。「美しさ」を競う時代から、「伝える力」と「共感を生む力」を競う時代へと完全にシフトしたといえます。
【レースクイーンとは】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:レースクイーンは完全に廃止されたのですか?
A1:完全になくなったわけではありません。F1などの一部の海外レースでは廃止されましたが、日本では活動の実態をより尊重し、2024年からSUPER GTを中心に「レースアンバサダー」へと名称を変更して活動が継続されています。現在も国内の様々なカテゴリーで重要な役割を果たしています。
Q2:なぜサーキットで傘を持っているのですか?
A2:単なるポージングではなく、過酷なサーキット環境においてドライバーの体温上昇や熱中症を防ぐための実用的な意味があります。また、精密な電子機器やタイヤが直射日光で過熱するのを防ぐという、レース結果を左右する重要なマシンケアの一環でもあります。
Q3:未経験からレースアンバサダーになることはできますか?
A3:可能です。ただし、まずはモデル・イベント系の芸能事務所に所属し、ウォーキングやポージング、マナーのレッスンを受けながらオーディションに挑戦するのが一般的なルートです。最近ではSNSでの積極的な発信実績が未経験からの採用において強力な武器になります。
Q4:衣装(コスチューム)は自前で用意するのですか?
A4:原則としてチームやスポンサー企業から支給されます。各チームのイメージカラーやスポンサーロゴがあしらわれた特注品で、シーズンごとに新デザインが制作されます。靴やインナーなどは指定の規定に従って自身で準備するのが通例です。
まとめ:時代とともに進化し続ける「サーキットの象徴」
レースクイーンという存在は、時代の価値観や社会の要請に合わせて「レースアンバサダー」へとその姿を変えながらも、モータースポーツの熱気と魅力を社会へ届ける情熱を受け継いでいます。
単なるサーキットの装飾ではなく、チームの勝利を支える現場スタッフであり、ファンとモータースポーツをつなぐアンバサダー。そして、自らの夢を切り拓く表現者として、サーキットの象徴たちは新しい時代のコースを力強く走り続けています。 (出典: レースクイーン と は(Yahoo!ニュース))